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「ブルーに生まれついて」映画感想・あらすじ【チェット・ベイカーの自伝映画】

甘いマスクに中性的な歌声、天才サックス奏者のチャーリー・パーカーに認められるほどのトランペットの実力を持ち、一時期はマイルス・デイビスも凌ぐほどの人気ジャズトランぺッターだったチェット・ベイカーの波乱の人生を描いた映画です。
悲哀に満ちたジャズミュージシャンを演じたイーサン・ホークの演技力も素晴らしく、ジャズの名曲に彩られた本映画はジャズに少しでも興味がある方は勿論のこと恋愛映画、自伝映画が好きな方にもおすすめできる映画です(^^)
今回は『ブルーに生まれついて』の感想・あらすじと映画で語られた以降のチェット・ベイカーについても少しご紹介したいと思います。
※後半ネタバレを含みます。

目次

あらすじ(内容紹介)

1950年代のウエストコースト・ジャズシーンを代表するトランペッターにしてシンガーのチェット・ベイカー。
黒人アーティストが主流のモダン・ジャズ界において、あのマイルス・デイヴィスをも凌ぐ人気を誇ると言われ一世を風靡。
甘いマスクとソフトな声で多くのファンを魅了したが、麻薬に身を滅ぼし過酷な日々を送っていた…。
本作は1人の天才ミュージシャンの転落と苦悩を、そしてある1人の女性との出会いによって再生する姿を描いたラブストーリーだ。
「レッツ・ゲット・ロスト」「虹の彼方に」等の名曲が本編を彩る。
(Amazonより引用)


チェット・ベイカーはウエストコーストジャズの代表的なミュージシャン。
ウエストコーストジャズとは、ロサンゼルスを中心としたアメリカ西海岸一帯で演奏されていたジャズの総称で1940年代に生まれたビ・バップに反動する形で生まれたクール・ジャズがルーツになってます。
実際はアメリカ西海岸では様々な演奏スタイルがあったようですが、一般的にウエストコーストジャズと言えばビ・バップの明るく奔放なイメージの真逆で西洋音楽の理論に基づいた抑制の利いたイメージ。
ビ・バップを黒人中心の音楽とするならウエストコーストジャズは白人中心の音楽でした。

映画の冒頭のシーンで刑務所に映画監督が訪れ、麻薬絡みで服役中のチェット・ベイカーに「自伝映画」の話を持ち掛けます。(映画内での話です)
その自伝映画のニューヨークの名門ジャズクラブ『バードランド』での演奏のシーンは「西海岸で人気のジャズトランぺッター、チェット・ベイカーがジャズの本場、ニューヨークに!」みたいな背景があったと思っていただければと思います。
そして当時のジャズシーンの中心人物であり、同じトランぺッターのデイジー・ガレスピーやマイルス・デイビスが品定めしにきた訳ですね(^^;)

本映画『ブルーに生まれついて』ではこの件は自伝映画(映画内で撮影している)の1シーンで過去の話という扱いになってますが、この時はマイルス・デイビスに「ここで演奏するのはまだ早い」と酷評を受けたようです(^^;)

映画撮影で共演することになった女優、ジェーン(カルメン・イジョゴ)とは恋仲になります。
しかし、恋人同士になって間もない頃に麻薬バイヤーから暴行を受け、チェット・ベイカーは前歯を失ってしまいます・・・。
「麻薬絡みのトラブルを起こしたこと」「トランぺッターの命ともいえる前歯を失ったこと」で映画撮影も中止になり、復帰後、一緒に仕事をしようと声をかけてくれていた旧知のプロデューサー、ディックにも縁を切られてしまいます。

全てを失ったチェット・ベイカーと恋人のジェーンにこの後、どうような運命が待っているのでしょうか!?
続きは是非、本映画『ブルーに生まれついて』をご覧ください(^^)

※ここからはネタバレを含みます。

ネタバレあらすじ・感想

チェット・ベイカーの自伝映画として

実際のチェット・ベイカーに会ったことは勿論、ありませんが・・・。
本映画では「格好良くはあるけど繊細でどこかだらしない感じ」が出ていて私が持っているチェット・ベイカーのイメージにピッタリ。
イーサン・ホークの演技力は流石ですね。

本映画『ブルーに生まれついて』はチェット・ベイカーの転落後からの人生を描きます。
史実ではチェット・ベイカーが麻薬絡みのトラブルで前歯を失うのが1970年。そしてアメリカを離れてヨーロッパに移動したのが
1970年代半ばとされているので(※マンガまるごとジャズ100年史より)なのでその辺りのストーリーになると思います。
チェット・ベイカーの転落後の人生ですが本映画内では下記の様に描かれています。

  • 家族からも冷ややかな態度をとられる
  • 金がなくガソリン価格の給油の仕事についたりもする
  • 久しぶりの演奏の仕事はピザ屋のステージだが酷評を受ける
  • 旧知のプロデューサー、ディックに仕事をくれるように頼みにいくが断れる
  • 家を借りることもできず恋人の車内で生活をする

中々の困窮ぶりです。
しかし、恋人の支えもあり、チェット・ベイカーは再びステージで脚光を浴びることを諦めません。
義歯をつけて時には血を流すほどに練習を重ねていきます。

何とかディックに仕事をもらえるようになってからも最初は御情けって感じで昔のレベルには到底、追いついていません。

しかし、次第に努力が実ってきます。

ある日、ディックがデイジー・ガレスピーのプロモーターを連れてきます。
プロモーターはチェット・ベイカーの演奏を聴いて驚きます。

「技術の衰えが逆に味になっている・・・」

チェット・ベイカーは昔のような演奏はできなくても新境地を開こうとしていました。

プロモーターのツテでデイジー・ガレスピーに演奏を聴いてもらうことができたチェット・ベイカーは
デイジー・ガレスピーに懇願します。

「バードランドで演奏させてください!」

そう、以前(映画の冒頭で出てきたシーン)マイルス・デイビスに酷評されたあのジャズクラブです。

デイジー・ガレスピーはまだ「まだ早い」「それは技術的なことではなく心の問題」と諭しますがチェット・ベイカーは食い下がります。
最終的にはデイジー・ガレスピーが折れ、バードランドに話をつけてくれることとなります。

喜んだチェット・ベイカーは早速、恋人のジェーンに伝えて一緒にニューヨークに来てほしいと頼みますが、あいにくジェーンの大事なオーデションの日と重なってしまい・・・。
言い争いの末、単独でニューヨークに行くことに。

久しぶりに行ったバードランドにはあの日の時と同じようにマイルス・デイビスが来ていました。

極度のプレッシャーを感じるチェット・ベイカー。そしてこんな時に限り、合成鎮痛薬メタドンが切れてしまいました。

時間が来ても中々、楽屋から出ようとしない、いや極度のプレッシャーのあまり出ることができないチェット・ベイカー。

チェット・ベイカーはとうとう麻薬に手を出そうとします・・・。
ちょうどその時、マネージャーが他のミュージシャンから合成鎮痛薬メタドンを入手し楽屋に訪れます。
マネージャーは麻薬に手を出そうとするチェット・ベイカーを見て最初は止めようとしますが・・・。(以下、映画内から)

チェット・ベイカー:言ったよな?このステージが大成功したら__
チェット・ベイカー:演奏の機会が増える、欧州ツアーもあり得るんだろ?
ディック:仕事がしたいのか?
チェット・ベイカー:人生を取り戻したい
チェット・ベイカー:わかるだろ、音楽をやりたいんだ
チェット・ベイカー:思いとおりに、これが最後のチャンスだ
ディック:そうかもしれないが、天使の言葉で歌っても愛がこもってなきゃ__
ディック:シンバルも同然だ
チェット・ベイカー:どういう意味だ
ディック:空っぽの演奏はしてほしくない
チェット・ベイカー:自信が湧くんだ、テンポが広く感じられる
チェット・ベイカー:長く感じられるだけじゃなくて一つ一つの音の中まで入れる
チェット・ベイカー:本当だ
ディック:それが君だ、それこそが君だ、ずっとそうだった
ディック:君が決めろ

何と最終的には判断をチェット・ベイカーの委ねます。
楽屋に入った時、間に合わずに既にチェット・ベイカーが麻薬を打っていた・・・ならよくあるパターンですが(^^;)
大舞台に前に、たとえ麻薬に身を染めても結果を出さなければいけないチェット・ベイカーの心情を汲んだということでしょうか。

・・・そしてとうとう楽屋から出てステージに向かったチェット・ベイカー。
ライブは大盛況で終わります。デイジー・ガレスピー、そしてマイルス・デイビスも渋々ながら認めざる得ないという感じで拍手を送ります。

ステージに立つ前、使ったのはメガドンなのでしょうかそれとも・・・。

恋愛映画として

本映画はチェット・ベイカーを知らなくてもジャズのスパイスが利いた恋愛映画としても楽しめる内容になっていると思います。
売れない女優と落ちぶれたジャズミュージシャンの恋愛映画・・・。
ちょっと『ラ・ラ・ランド』にも設定が似てたりしますが(^^;)
ストーリー的には『ラ・ラ・ランド』は夢を追い求めり若者たちの恋愛映画。こちらは再起をかけるジャズミュージシャンとそれを支える恋人の物語ですね。

苦労続きのエピソードが多い本作ではありますが二人の前向きな恋愛のおかげで幾分ポジティブに観ることができます。
このままチェット・ベイカーが麻薬に手を出さずニューヨークでの再起をかけたライブに成功していればハッピーエンド。となる訳ですが・・・。

ジェーンは自ら夢を追いかけつつもチェット・ベイカーを献身的に支えていきます。しかし、チェット・ベイカーの再起をかけるニューヨークでのライブの時期がちょうど大切なオーデション重なってしまいます。
「ついてきてほしい」と懇願するチェット・ベイカーを最初は嗜めていましたがだんだん喧嘩になり、一人で行かせることに。
しかしオーデションの日程が変わったので結局、ライブ会場に足を運びます。

そこで見たチェット・ベイカーの演奏はとても素晴らしいものでした。しかし、チェット・ベイカーの演奏中に「頬を触るしぐさ」を見て涙します。

ジェーンはチェット・ベイカーが麻薬を打つと頬を触る癖を知ってました。

そして演奏中、チェット・ベイカーは頬を触っている・・・。

麻薬を打ったのだと確信したジェーンは近くにいたディックに結婚指輪代わりにもらった「トランペットのバルブのネックレス」をチェット・ベイカーに返すようにと預け、会場を去ります。

苦労しながらも少しずつ前向きに話が進み、しかし最後の演奏のシーンで全てが覆る・・・。

切ない結末です・・・。

その後のチェット・ベイカー

エンディングでさらりと説明がありますが・・・。
チェット・ベイカーは映画のラストシーンの後、ヨーロッパに行きます。
再起のためにドラッグを断つ努力をしますが、結局は生涯、麻薬を断ち切れず・・・。

1988年、生涯を終える直前のライブでは名演奏を披露したチェット・ベイカーでしたが、まだ60歳を過ぎていない年齢なのに容姿は実年齢を遥かに超えるほど老い、服装もボロボロだったために会場入りの際、ガードマンになかなか通してもらえなかったという切ないエピソードがあります。
若かりし頃はジャズ界のジェームス・ディーンと言われるほど美男子だったチェット・ベイカーも晩年は変わりはてた姿になってました。

そして1988年5月13日、オランダのアムステルダムのホテルの窓から転落するという不可解な死で人生の幕を閉じます。

まとめ

チェット・ベイカーの自伝映画というだけで暗いストーリーと決めつけていましたが・・・。
ラスト直前までは苦難続きの人生でも恋人の支えもあり、真剣に「麻薬断ち」と「再起」に向けて努力するチェット・ベイカー姿は感動を覚え、応援したくなります。

故にチェット・ベイカーのことを少しばかり知っていた私でも最後のシーンは「麻薬に手をださない」と淡い期待をしてしまいました(^^;)

天才ミュージシャンの転落と苦悩を、そしてある1人の女性との出会いによって再生する姿を描いた本映画はジャズ好きでなくてもきっと愉しめると思います。
もしかしたらジャズが好きになるきっかけになるかも知れません(^^)

以上、「ブルーに生まれついて」映画感想・あらすじ【チェット・ベイカーの自伝映画】でした。

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