ふたたび-swing me again- 【映画感想】ジャズは差別や偏見を乗り越えれる音楽なのか!?

ジャズを通じた家族愛や友情__。

ハンセン病問題という重いテーマを取り扱った映画ですが、「家族の繋がり」「音楽で繋がった友情」を考えさせられる心温まるロードムービーでもあります。

後半ネタバレも含みます。

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あらすじ(内容紹介)

貴島健三郎、78歳。男は50年の時を経て、最後の旅に出た。友との約束を果たすために──。神戸。50年前ジャズバンドに青春を賭けていた男たちは、今やそれぞれの人生の最終コーナーを曲がろうとしていた。78歳になった貴島健三郎は、かつてのバンド仲間を探すために、思うように動かなくなった手に杖を握らせ立ち上がった。彼の願いは、何も言えないまま姿を消したあの日の許しを請うこと。そして、あの日果たすはずだった、憧れのジャズクラブ “ソネ” でのセッションを実現させることだった。それは、彼にとってやり残した人生を取り戻す最後の旅─―。(C)2010「ふたたび」製作委員会

(Amazonより引用)

2010年の映画ですので50年前というと1960年あたり。

この時代はジャズはモダンな音楽だったことでしょう。

貴島健三郎は50年前、ジャズバンドとして「これから」というときに病気にかかってしまいます。

「ハンセン病」です・・・。

この病気は今でこそ特効薬がありますが当時は不治の病で且つ伝染があり、外見にも影響を及ぼす病気でしたのでこの病気を患った人は施設に隔離されていました。

平成21年の時点で全国に15か所の病療養所はあり、2584名の入所者がいたそうです。

私にとってはハンセン病というのは学校の授業で習った程度。

「昔は恐ろしい病気だった」という印象で天然痘や黄熱病みたいに過去の病気という印象でした。

しかし、『らい隔離法』は平成まであったんですね・・・。

貴島健三郎はずっと施設を出ることを拒否していましたが、一時帰省を承諾します。

帰省し、息子の家で過ごすのもつかの間、突然、姿を消します。

かつてのバンド仲間と合うために・・・。

道中は暴漢に襲われ(杖で撃退したが)警察署にいるところを迎えに来た孫の大翔(鈴木亮平)を引き連れ、仲間と合いにいきます。

やり残した夢をかなえるために・・・

果たして無事、仲間に遭えるのか?

そして仲間たちに受け入れてもらえるのか・・・。

重たいテーマを取り扱ってますが「家族愛」「音楽の素晴らしさ」等、感動する要素がつまった作品です。

※ここから先はネタバレを含みます。

3つの見どころ

見どころ① 家族の絆

健三郎の息子、良雄(陣内孝則)が父の一時帰省の話をした際、家族のリアクションは微妙でした。

妻の律子(古手川祐子)こそ知っていたものの子供たち(健三郎の孫たち)は自分の祖父は死んだと聞かされていたくらいだから仕方ないですね(^^;)

大翔は受け入れムードでしたが、律子と大翔の姉は健三郎を腫物扱い。

朝、玄関の花壇に水をやるため、外に出た健三郎に対して「通勤時間はあまり外に出ないでください!」とあきらかに世間体を気にしてます。

大翔の姉は結婚を控えてましてが、どうも破断になってしまった様子。

タイミング的にも健三郎のことが知られたと言わんばかりの出来事です。

また大翔の方も付き合っていた彼女に「ハンセン病の祖父がいる」「でも家族何だから一緒に暮らして当然」など話していたら、健三郎との旅の途中、家族の反対の受け「別れる」と電話で告げられてしまいます。

このあたりのエピソードは、まだハンセン病に対しての偏見が根強く残っているということを訴えてますね。

健三郎も自分が腫物になることが分かっていたので敢えて今まで出てこなかったのでしょう。

しかし、このタイミングで健三郎が一時的でも施設から出たのは理由があります。

勿論、大きな理由の一つは「かつての仲間と合い、昔の夢を叶えること」ですが、もう一つは家族を想ってのこと。

息子の良雄は会社の経営が上手くいかず、健三郎に出ているはずの補償金を必要としていました。

そのことを父の健三郎になかなか言い出せずにいたのですが、健三郎は察していたのでしょう、何も言わず補償金の入った通帳を息子名義にしていました。

健三郎が仲間たちと出会い、想い出の店「ソネ」での演奏が終わった直後の家族とのシーンが感動的です。

演奏に疲れ、控室のようなところで休んでいる健三郎のもとに家族が訪れます。

良雄が通帳のことを尋ねようとすると・・・

「良雄・・・何も言うな・・・」

健三郎はそれを制止します。

ここから後のシーンはこの映画の大きな見どころの一つです。

健三郎の想いに思わず涙してしまいます。

詳細は是非、ご覧になっていただければと思います。

見どころ② ジャズで通じた仲間たちと孫との関係

■大翔との絆

健三郎の孫、大翔は大学のジャズ研でトランペットを演奏してます。

どうも健三郎が昔、1枚だけ出したアルバムを聴いてトランペットに魅入られたようです。

しかし大翔は冒頭の大学での部活シーンでは「ワンマン演奏」が原因で仲間からの評判はあまり良くない様子が描かれています。

しかも本人はそのことを意に介していません(^^;)

前述した通り、健三郎が暴漢に襲われそうになって警察にいるところを迎えにいったことをきっかけに健三郎の「仲間を探す旅」に同行することになるのですが・・・。

最初は渋々付き合っているといった感じでしたが、大翔はこの旅を、そして「健三郎の仲間たちの再開」を通じて「仲間」の大切さに気づいていったのではないでしょうか。

最後の仲間たちの演奏のシーンで健三郎は疲れてしまい、一人ステージを降りる際、孫の大翔にトランペットを渡します。

祖父から孫へ。

そして祖父の代わりに演奏する大翔は以前のような「ワンマン」の演奏ではなくなりました・・・。

こんな祖父と孫との関係もこの映画の一つの見どころでしょう。

■仲間たちの絆

50年くらいぶりの仲間との再会。

すでに隠居し少しボケ始めている人、孫と楽しく遊びながら暮らしている人、経営者として今も尚、第一線で活躍している人・・・。

仲間の現状も様々です(^^;)

しかし、誰一人、健三郎を忘れている人はいませんでした。

家族と違い、ハンセン病だった健三郎を腫物扱いする人など皆無です。

すでに亡くなっていますが健三郎の妻(良雄の母)もバンドのメンバーでした。

健三郎のことを病気と知りながらも子供を身ごもりました。

青春時代にバンドを組み、同じステージで演奏し、同じ夢を見ながら共に頑張ってきた仲間たちの絆の深さを感じるエピソードもこの映画の大きな見どころの一つです。

見どころ③ ジャズ映画として

偏見を乗り越えた家族愛や仲間たちの絆・・・。

ストーリーも素晴らしいですが音楽も素晴らしい!!

予告編で演奏されているのは「Alive Again」と「SO FARAWAY」。

どちらも本映画のオリジナルの様ですが、キャッチなメロディでジャズ初心者の方も構えずに聴ける良曲だと思います。

YouTubeでプロのジャズミュージシャンによる「SO FARAWAY」があったので貼っておきます。

終盤「ソネの店」のシーンでは超有名サックス奏者のナベサダ(渡辺貞夫)が友情出演します。

ほんの少しですがサックスを演奏してくれるのでこちらも見どころです。

因みにナベサダさんとはこの方です。(念のため)

サントラもあるようなので音楽が気に入った方はどうぞ♪

 まとめ

ジャズは黒人音楽と白人音楽の融合と言われ、その歴史は人種差別とは切っても切れない関係にあると思います。

ビリー・ホリデーの「奇妙な果実」は黒人差別を歌った曲もありますし、時代は代わりますがフリージャズが誕生してからは人種差別のプロテクト・ミュージックとしてジャズを演奏する黒人ミュージシャンも出てきました。

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一方では黒人主体のバンドで白人が差別を受けることもあったようです。

マイルス・デイヴィスのバンドに在籍していたビル・エバンスも少なからず、そんな目に遭っていたようです。

マイルス・デイヴィス本人は黒人差別に関してはひと際、敏感ではありますが、有能なミュージシャンなら人種を問わない人でしたが。

「いいプレイをする奴なら、肌の色が緑色の奴でも雇うぜ」

マイルスのこの言葉は有名です。

複雑な歴史を経てきたジャズ。

本映画の監督、塩屋さんはハンセン病という重たいテーマをジャズにつなげた理由をこのように語っています。

重いテーマを、エンタテインメントとして伝えるためには、人の心を震えさせ感動を与える何かが必要だと。それでひらめいたのがジャズだったんです。僕はハンセン病の映画だからこそ、明るく描きたかった。その底を流れる暗さは、観た人が感じる部分だと思うので。

(インタビュー記事より抜粋)

ジャズのルーツは、19世紀アメリカの奴隷政策によって人間としての尊厳を奪われ、虐げられきた黒人たちの歴史でもある。アフリカから船に乗せられ遠いアメリカに連れてこられ、過酷な強制労働によってボロボロになるまで働かされる深い悲しみと絶望の中から、彼らは自分たちの英知を育んでジャズというエンタテインメントを創造したわけですよ。虐げられ奪われても決して失われない人間の尊さを、胸を打つ音で響かせてくれるもの、それがジャズだった。

(インタビュー記事より抜粋)

映画「ふたたび swing me again」監督 塩屋俊さんスペシャルインタビュー (第1回)

病気に対する差別や偏見を取り扱った重いテーマの映画です。

しかし、必要以上に暗くなることはなく、しっかりと心に響く良作だと感じました。

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