『蜜蜂と遠雷』直木賞受賞作品の感想やあらすじ、見どころ

今回の読書感想は第156回直木賞受賞作品『蜜蜂と遠雷』。

恩田陸さんの著書でご本人の「最高傑作」と評されます。

3年に一度、開催される国際ピアノコンクールが舞台の物語。

魅力的な登場人物(コンテスタント)が数多く登場し、互いに刺激し合い、清々しく成長していく様を描いた青春群像小説です(^^)

※後半ネタバレを含みます。

スポンサーリンク

あらすじ(内容紹介)

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

(Amazonより引用)

物語としては単調なのかもしれません。

基本的には芳ヶ江国際ピアノコンクールでの二週間を描いた作品。

当然、大筋は一次予選から始まり、本選へ・・・という流れですから。

しかし、そのコンクールの臨場感・緊張感を見事に表現してます。

主要登場人物の「コンクール参加に至るまでの経緯」や「人となり」「コンクール中の心情」についても随所で丁寧に描かれています。

そして、その登場人物達、個々の物語が絶妙に重なり合い、スリリングで読み応えのある内容になってます。

競争という名の自らとの闘い・・・。

Amazonの紹介文にこう書いてあります。

本書の登場人物達はスポ根小説みたいにライバル同士が互いに闘争心むき出しになっている様な感じはなく、むしろ共闘しているかのように感じるのはやはり音楽コンクールというのは「自らのとの闘い」だからなのか・・・。

さて、芳ヶ江国際ピアノコンクールで優勝するのは誰なのでしょうか・・・。

※ここから下はネタバレを含みますのでご注意ください。

舞台となるコンクールについて整理してみる

芳ヶ江国際ピアノコンクールの概要

芳ヶ江は近年評価がめざましい。 それというのも、ここで優勝した者はその後著名コンクールで優勝するというパターンが続いたからで、新しい才能が現れるコンクールとしてとみに注目を集めている。(本文より)

3年ごとに開催されて上記の通り、注目されているコンクールなので世界からコンテスタントが集まります。

芳ヶ江は、書類選考だけでは分からない才能を取りこぼしているかもしれない、と第一回から書類選考落選者を対象にしたオーディションを行っていた(本文より)

通常は「書類選考」を経てコンクールの参加が認められるようですが、落選者を対象にしたオーデションも行っています。

実際、前回大会でオーデション組から優勝者が出たの期待が高いようです。

本選までの道のり

  1. 一次予選⇒約100名(書類選考もしくはオーデション)
  2. 二次予選⇒24名(約3/4は落選)
  3. 三次予選⇒12名
  4. 本選⇒6名
本選に行くには3回の予選を突破しなければいけません。

コンクール自体が2週間の長丁場なのでコンディションやメンタルの管理も重要になってきます。

モデルになったコンクール

浜松国際ピアノコンがモデル 直木賞「蜜蜂と遠雷」|静岡新聞アットエス

若手ピアニストの登竜門とされる浜松国際ピアノコンクールがモデルになっているようです。

著者の恩田さんは2006年、2009年、2012年、2015年と約12年間も取材されたとか!?

同コンクールの関係者も今回の直木賞受賞に大喜びだそうです(^^)

登場人物を整理する

主なコンテスタント

風間塵

パリで開かれたオーデションにクラッシク界において、だれもがリスペクトするユウジ・フォン = ホフマンの推薦状をひっさげ現れた天才ピアニスト。

15歳の少年。

父親が養蜂家であることから「蜜蜂王子」と呼ばれる。

クラッシク界の常識が通用しない型破りな演奏で師のホフマンからも劇薬と称される。

栄伝亜夜

国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューも果たした元天才少女。

教師兼マネージャー母の死をきっかけにクラッシクピアノから遠ざかる。

母の知り合いが学長を務める有名私立音大に通う、20歳。

指導教官の勧めで気はのらないがコンクールに参加することに・・・

マサルとは子供の頃に出会っており、マサルがピアノを始めるきっかけを与えることになる。

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

アメリカのジュリアード音楽院の隠し玉。

ナサニエル・シルヴァーバーグに師事する、19歳。

容姿端麗で且つ、完璧な演奏技術に華やかさも併せもつ。しかも人格者。

「ジュリアードの王子様」と呼ばれ、聴くものを魅了してやまない。

子供の頃に亜夜と出会っており、その時にピアノの楽しさを知る。

高島明石

音大出身でかつては国内有数のコンクールで5位の実績をもつ。

しかし今は結婚し楽器店勤務のサラリーマンをしている、28歳。

子供に「パパは本当に音楽家を目指していた」という証拠を残したいというのが、今回のコンクール出場の理由だが・・・。

主な審査員・運営側

嵯峨三枝子

素行は悪いが「耳」は確かな審査員。

もともとは破天荒で知られたピアニストでもある。

パリのオーデションで塵の演奏を聴いたときは激しく拒絶した。

ナサニエル・シルヴァーバーグとは元夫婦。

ナサニエル・シルヴァーバーグ

著名なピアニストだったが現在は指揮者での活躍が目立つ。

ジュリアードで教授を務め、マサルの師匠でもある。

普段は気さくな性格だが、激情家の一面も持ち、特に音楽に関しては自他ともに厳しい。三枝子とは元夫婦。

菱沼忠明

世界的有名な作曲家。

芳ヶ江国際ピアノコンクールでは、日本人作曲が作った新曲が課題曲に入るが、今回その課題曲「春と修羅」を作った。

生前のホフマンと親交があった。

その他の主な登場人物

ユウジ・フォン = ホフマン

本書では神格化され、かなりの影響力を持つピアニスト。

今回のコンクールの前に亡くなっている。

しかし最後にクラッシク界に風間塵というギフトを残す・・・。

浜崎奏

亜夜が通う音大の学長の娘で亜夜の先輩でヴァイオリニスト。

面倒見の良い性格でおっとりした亜夜と気が合う。

コンクール中は亜夜に付きそう。

仁科雅美

カメラマンで明石の同級生。

コンクールのドキュメンタリー番組の撮影で明石を担当する。

3つの見どころ

見どころ① コンクール優勝は誰に・・・

コンクールを舞台にしている以上はここを目がけて物語は進んでいきます。

ぶっちゃげ言いまして、主要登場人物の中で明石に関しては優勝は・・・(^^;)

高年齢のうえ、ブランクがあり、且つ普段はサラリーマンをしていながらの挑戦なので彼自身は目指すところは違うのでは!?読み進めていくうちに感じてしまいます。

また物語が進むに連れて風間塵、栄伝亜夜、マサルの天才っぷりが際立ってきます。

何となく優勝はこの3人の中からかな~と予想しちゃったりしますが・・・。

「誰が優勝するのか」を考えながら読み進めるのも面白いと思います。

主人公は塵でインパクトは抜群ですが破天荒すぎて、審査員の評価が分かれるところがあります。

亜夜はジュニア時代にCDデビューまで果たしているので本来の実力からしたら、一枚上手なのかもしれませんが、まだイマイチ迷いがある感じが否めません。

マサルは完璧な演奏をしますが、他の二人に比べて万人受けする演奏とったイメージがあります。

もしかしたら別の登場人物が優勝をかっさらうパターンかも・・・。

因みは私は「誰が優勝するのか」予想は外してしまいました(^^;)

見どころ② コンテスタントや審査員たちが織り成すドラマ

主要コンテスタント一人ひとりにスポットを充て、「参加の経緯やピアノ歴」、「今回のコンクールに賭ける想い」、「コンクールが始まってからの心情」などを丁寧に描いてます。

特に28歳、最年長の高島明石の件は他の3人の天才たちとのエピソードとは違った趣を見せています。

サラリーマンである彼は、仕事の合間の限られた時間で練習し、当日は若き天才たちに交じり、気遅れしつつも自分らしい演奏を試みる・・・。

明石を支える家族や友人の雅美とのエピソードも良いですね。

審査する側の人間についてのエピソードも興味深いです。

ホフマンが残した劇薬「風間塵」に対してどう対応するか!?

彼の演奏を受け入れるか拒絶するか・・・。

拒絶し落としてしまえば、もしかしたら今後一生「風間塵」を落とした審査員とレッテルを張られるかもしれない・・・。

審査員側の苦悩が垣間見れます。

また本書の登場人物達(主なコンテスタント)は良くも悪くもみんな仲良しです(^^;)

同じコンクールで優勝を争う者同士なので火花を散らすような部分があっても良いかなとも思うのですが・・・。

互いが認め合い共に成長していく感じですね。

こんな感じも清々しくて良いかも知れません。

見どころ③ 塵は音を連れだせるか!? 亜夜は復活できるか!?

塵はホフマン先生と「音を外へ連れ出す」約束をしています。

それがどういう意味なのか本人もよくわかっていません。

ホフマン先生は塵をクラシック界の起爆剤としてコンクールに送り込みました。

塵という存在はコンクール全体にどうような影響を及ぼすのか!?

また「音を外に連れ出す」ことができるのか!?

ここが本書の一番の見どころかもしれません。

そんな塵の影響を一番受けているのは亜夜といっても過言ではありません。

コンクールの演奏の順番は抽選で決まるのですが亜夜は一番最後。

いつも自分の演奏直前まではブランクやプレッシャーで押しつぶされそうになりますが、自分の直前に演奏する塵の演奏を聴くと何故か吹っ切れる・・・。

塵と亜夜、マサルの3人は互いの演奏を称え合っていますが、やはり塵と亜夜が互いに共鳴し合っているって感じですね。

二人のマサルの演奏に対する感想は称えてはいるもののちょっと軽い気がする(^^;)

亜夜は塵に影響され、どんどん自分の演奏を取り戻していく様がわかります。

本書には色んな魅力的な人物が登場しますが、やはりこの二人がメインの物語なんだなと気づかされます。

まとめ

音楽は小説と相性が良いのかも知れません。

映画やTVのように映像にしてしまうと「音」が具現化されてしまいます。

(そこで色んな賛否がでる可能性があります)

小説では勿論、作家さんの腕によるところなのですが文字での表現力で音の可能性を無限大に広げることができると感じました。

そういえば、以前に読んだ調律師の物語『羊と鋼の森』も繊細な表現で「音」を紡いでました。

羊と鋼の森【感想・あらすじ】2016年本屋大賞受賞作

『羊の鋼の森』は同じ音楽関連の小説でも「縁の下の力持ち」調律師の成長物語なので派手な演出はなく、ほのぼのとするハートフルな作品でした。

逆に本書『蜜蜂と遠雷』はピアノコンクールを舞台にした天才ピアニスト達の華やかでスリリングな青春群像小説。

著者の恩田陸さん自身も高校時代までピアノを嗜み、大学時代はビッグバンドに所属していたと下記のインタビュー記事にあります。

hon.bunshun.jp”>音楽の「才能」とは何なのか――。 『蜜蜂と遠雷』 (恩田陸 著)|インタビュー・対談|「オール讀物」編集部|本の話WEB

音楽愛好家である著者が約12年間の構想・取材を経て完成した大作!

クラッシクが題材ですが音楽好きの方なら楽しめると思います。

ジャズ好きの私でも大満足の作品でした(^^)

スポンサーリンク

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です