ジャズテナーサックス奏者のスタン・ゲッツ。
メロディアスなアドリブ演奏を唯一無二の美麗な音色で奏でる様はどこか豪快なイメージのあるテナーサックスの演奏とは一線を画し、まさにクールテナーの最高傑作と呼ぶに相応しいジャズミュージシャンです。
スタン・ゲッツは若くして成功し、生涯第一線で活躍しましたが、ドラッグ絡みや性格が災いしてトラブルも多かったとか・・・。
そんなスタン・ゲッツをおすすめ名盤と共に紹介したいと思います(^^)
スタン・ゲッツについて
スタン・ゲッツのプロフィール
出生名:Stanley Gayetzky
生誕:1927年2月2日
出身地: ペンシルベニア州フィラデルフィア
死没:1991年6月6日(満64歳没)
担当楽器:テナーサックス
主な経歴
年号 | 内容 |
1927年 | 2月2日、フィラデルフィアにて生まれる。13歳の時にサックスを買い与えられる。独学で演奏を覚え、16歳頃からステージデビューを果たす。 |
1943年 | タン・ケントン、ジミー・ドーシー ベニー・グッドマン楽団で活躍。 |
1947年 | ウディ・ハーマン第2期モダン・オーケストラ における『アーリー・オータム』の演奏が評判を呼び、クール・ジャズの代表格として知られるようになる。 |
1949年 | 独立し、以後は独自のバンドを編成し音楽活動を行う。 |
1951年 | 2年間、北欧を楽旅。 |
1954年 | 注射用のモルヒネ欲しさにシアトルの薬局で武装強盗未遂事件を起こして逮捕される。 |
1958年 | 61年までスウェーデンを拠点に活動。 |
1962年 | ボサノバを取り入れた『ジャズ・サンバ』が全米ポップ・アルバム・ チャートで首位を獲得。 |
1963年 | 『ゲッツ/ジルベルト』がグラミー賞4部門を独占。 |
1967年 | 当時若手のチック・コリアのプレイにスポットを当てたアルバム『スウィート・レイン』を発表。 |
1970年 | 新進ミュージシャンを積極的にメンバーに入れ、新しいサウンドを追求しながら精力的に音楽活動を行う。 |
1991年 | 6月6日肝臓癌により亡くなる。 |
唯一無二のサウンドと常に進化していく音楽性
決して軽い演奏って訳ではないのですが、まるでリコーダーを吹くような流麗な演奏と温かみのある優しい音色。
ジャズを聴き始めた頃、テナーサックは低音で豪快で・・・。
ソニー・ロリンズやデクスター・ゴードンのようなイメージがあったのでスタン・ゲッツの演奏を初めて聴いたときは衝撃的でした。
その華麗な演奏スタイルの本質は生涯不変だったかも知れません。
しかし、経歴を見ていただくと常に新しい音楽に取り組んでいたことがわかると思います。
1940年代は楽団の看板奏者として、1950年代はクール・ジャズの代表格として、1960年代はボサノバブームを起こし、その後1970年以降も新進のジャズミュージシャンと、それこそ死の直前まで精力的に音楽活動を続けてきました。
私生活ではアルコールとドラッグに溺れ、相当荒れていたようですが(^^;)
スタン・ゲッツはマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンのようにジャズに大きな革命を起こした訳ではありませんが、常に新しい音楽を追求する姿勢を見せ、唯一無二のクールテナーとして生涯、第一線で活躍したミュージシャンです。
スタン・ゲッツおすすめの名盤①

クールテナーの神髄を味わえる名盤!
スタン・ゲッツ・プレイズ
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子供と写っている何とも微笑ましいジャケットですね 。
1952年の作品。アルバムの商品紹介にも「リコーダーのようにスムースなゲッツのテナー。これを才能と呼ばずして何と呼ぶ」と記載されている通りゲッツらしいクールテナーの神髄を味わえるアルバムです。
収録曲も『星影のステラ』『ボディアンドソウル』『恋人よ我に帰れ』など有名なスタンダード曲が入ってるので初心者の方にもおすすめです。
- 星影のステラ
- タイム・オン・マイ・ハンズ
- ティス・オータム
- 今宵の君は
- 恋人よ我に帰れ
- ボディ・アンド・ソウル
- アラバマに星落ちて
- 私に頼むわ
- サンクス・フォー・ザ・メモリー
- ヒム・オブ・ジ・オリエント
- ジーズ・フーリッシュ・シングス
- ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン
スタン・ゲッツ・プレイズのおすすめ曲
こちらの2曲。『星影のステラ』はキレイなメロディにスタン・ゲッツの音色がピッタリ合ってます。『恋人よ我に帰れ』はアップテンポの曲ですが本当にリコーダーを吹いているかのような軽やかで且つ華のある演奏です。
スタン・ゲッツおすすめの名盤②

ボサノバの大ヒットアルバム!
ゲッツ/ジルベルト
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1963年、グラミー賞4部門を獲得した大ヒット作。 スタン・ゲッツの良さは勿論のことボサノバの第一人者、ジョアン・ジルベルトとのコラボも見どころの一つです。
ジョアン・ジルベルトの涼し気で淡々としたボーカルとスタン・ゲッツのクールな演奏がピッタリのこのアルバムですが実はこの二人は不仲だったらしいですね(^^;)
ボサノバの代表曲で彩られた収録曲も名盤に相応しい内容です。
- イパネマの娘
- ドラリセ
- プラ・マシュカー・メウ・コラソン
- デサフィナード
- コルコヴァード
- ソ・ダンソ・サンバ
- オ・グランジ・アモール
- ヴィヴォ・ソニャンド
ゲッツ/ジルベルトのおすすめ曲
ボサノバといえば『イパネマの娘』が超有名ですが、ここは敢えて『デサフィナード』と『コルコヴァード』を。『デサフィナード』はボサノバらしい爽やかで明るい曲。『コルコヴァード』は美しいバラードです。
スタン・ゲッツおすすめの名盤③

この二人の演奏は美しすぎる…
Stan Getz & Bill Evans
モダン・ジャズを代表するジャズピアニスト、ビル・エバンスとのコラボ作品。
ビル・エバンスといえば静粛を重んじ甘美な音色を奏でるエレガントな演奏が特徴で、またピアノトリオの際も決して自分の演奏をだけを前面に出さないインター・プレイを信条としているピアニストです。
スタン・ゲッツとビル・エバンスが組んだこのアルバムは美しいの一言です。
優雅に過ごしたい休日の極上のBGMになり得る1枚です。
- Night And Day (Album Version)
- But Beautiful (Album Version)
- Funkallero (Album Version)
- My Heart Stood Still (Album Version)
- Melinda (Album Version)
- Grandfather’s Waltz (Album Version)
- Carpetbagger’s Theme
- Wnew (Theme Song)
- My Heart Stood Still
- Grandfather’s Waltz
- Night And Day
Stan Getz & Bill Evansのおすすめ曲
1曲目のコール・ポーター作曲の名曲『Night And Day』と6曲目の『Grandfather’s Waltz』がおすすめです。『Grandfather’s Waltz』はあまり有名でない曲かも知れませんがスウェーデンの民謡らしく、とても素敵な曲なのでぜひおすすめしたいです(^^)
スタン・ゲッツおすすめの名盤④

若き日のチック・コリアとの共演
スウィート・レイン
まだ若手で無名だった頃のジャズピアニスト、チック・コリアをサイドマンに迎えての作品。
新進気鋭のチック・コリアとボサノバブームを経て円熟味を増したスタン・ゲッツの共演は他のアルバムにない独特の世界観があります。
40年代から活躍しているスタン・ゲッツはこの頃はもうベテランの域だと思いますが若いミュージシャンを積極的にバンドに入れ、進化しようとする姿勢はさすがです。
- リザ
- オ・グランジ・アモール
- スウィート・レイン
- コン・アルマ
- ウィンドウズ
スウィート・レインのおすすめ曲
5曲しか入ってないのでどの曲も良いのですが、アルバムタイトルにもなっている『スウィート・レイン』がおすすめです。スタン・ゲッツの美しくもどこか哀愁を帯びたフレーズが堪能できます。
スタン・ゲッツおすすめの名盤⑤

美しくも鬼気迫る演奏
ピープル・タイム
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スタン・ゲッツの最後のアルバムでジャズピアニスト、ケニー・バロンと共演したライブ収録の作品です。
なんとスタン・ゲッツが亡くなる3カ月前のものです。
スタン・ゲッツの死因は肝臓がんで突発的な事故や病ではなかったのでこのライブの頃は既に満身創痍だったことでしょう。
クールテナーらしく最後まで美しい演奏ですが、美しい中に熱を帯びた鬼気迫るものを感じさせる、まさに命を削った熱演を収録した一枚です。
ディスク:1
- イースト・オブ・ザ・サン(アンド・ウェスト・オブ・ザ・ムーン)
- ナイト・アンド・デイ
- アイム・オーケイ
- ライク・サムワン・イン・ラヴ
- ステイブルメイツ
- アイ・リメンバー・クリフォード
- ゴーン・ウィズ・ザ・ウィンド
ディスク:2
- ファースト・ソング
- ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラヴ
- 飾りのついた四輪馬車
- ピープル・タイム
- 朝日のようにさわやかに
- ハッシャバイ
- ソウル・アイズ
ピープル・タイムのおすすめ曲
『ナイト・アンド・ディ』を聴いてみてください。先に紹介したアルバム『Stan Getz & Bill Evans』でも同曲を紹介しましたが、こちらの方が白熱した演奏という印象があると思います。ライブ音源なので当たり前といえばそうなのですが・・・。『アイ・リメンバー・クリフォード』も哀愁漂う味わい深い演奏です。
スタン・ゲッツおすすめの名盤⑥

ボサノバの名盤
ジャズ・サンバ
ボサノバと言えば先にご紹介しました本場のボーカリスト、ジョアン・ジルベルトを迎えたアルバム『ゲッツ/ジルベルト』が有名ですが、この『ゲッツ/ジルベルト』に先駆けてチャーリー・バード(gt)とともに1962年にリリースしたアルバムが『ジャズ・サンバ』です。
ボサノバは当時、ブラジルで生まれた新しい音楽でした。
このボサノバをいち早くジャズに取り入れてアメリカで発表したのがスタン・ゲッツとチャーリー・バードという訳です。
ボサノバについてはこちらの記事も参照してください。

『ジャズ・サンバ』がヒットしたおかげで後の『ゲッツ/ジルベルト』に繋がります。
- デサフィナード
- サンバ・ディーズ・デイズ
- 鵞鳥のサンバ
- 悲しみのサンバ
- ワン・ノート・サンバ
- エ・ルーショ・ソ
- バイーア
ジャズ・サンバのおすすめ曲
デサフィナードが有名ですがここでは『ワン・ノート・サンバ』をおすすめしたいと思います!
曲名を直訳すると「一つの音のサンバ」となります。
その曲名の通り連続した同じ高さの音からなるシンプルなメロディでボサノバを代表する名曲です。
スタン・ゲッツおすすめの名盤⑦

品の良い極上のジャズが堪能できる!
スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム
1955年、ストックホルムで録音されたスタン・ゲッツのワンホーンアルバム。
ヨーロッパのジャズミュージシャンと当時のスタン・ゲッツの演奏は相性が非常に良いですね。
品の良い極上のジャズが堪能できる作品です。
- インディアナ
- ウィズアウト・ア・ソング
- ゴースト・オブ・ア・チャンス
- 恋のため息
- エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー
- 虹の彼方に
- ゲット・ハッピー
- ジーパーズ・クリーパーズ
スタン・ゲッツ・イン・ストックホルムのおすすめ曲
『インディアナ』はスタン・ゲッツのテナーサックスの鮮やかさが存分に味わえる曲、『エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー』は美しく切ないメロディをスタン・ゲッツの美しいテナーの音色で堪能できます。
この2曲が特におすすすめです!
Amazon『Prime Music』で聴けるスタン・ゲッツ
無料で聴けるスタン・ゲッツのアルバム
- Getz/Gilberto
- STAN GETZ PLAYS
- People Time
- ナット・ソー・ロング・アゴー
- ゲッツ・ジルベルト・アゲイン
Amazonのプライム会員だと上記、5つのアルバムが無料で聴けます。
今回、紹介したアルバムのうち3つ含まれてますね。
既にプライム会員の方は一度、聴いてみてください(^^)
まとめ
スタン・ゲッツは若くして脚光を浴びたこともあり、その分ドラッグに手を出すのも早かったようです・・・。
私生活ではドラッグ絡みのトラブルも多く、性格は王様気質で横柄。ろくでもない人だったらしいですが(^^;)
しかし、音楽の才能は別物。単独でも輝けるし、今回ご紹介したアルバムの通り他のミュージシャンとコラボしても共に輝けることもできる。しかも本人が意図していたかはわかりませんが若手を積極的に起用することにより、若手の育成にも大きな成果を上げました。
以上、少しでもスタン・ゲッツの魅力が伝われば幸いです(^^)
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