獣の奏者 探求編・完結編【読書感想・あらすじ】上橋菜穂子著書

『獣の奏者』【探求編】【完結編】の読書感想です。
「『獣の奏者』は【闘蛇編】【王獣編】で完結した物語でした__」と著者の上橋菜穂子が【完結編】の巻末に書かれていた通り、本来はこの2巻で物語としては完結を迎えております。
【探求編】【完結編】は続編的な位置づけの物語。

エリンは愛するものと結ばれ母となっています。
幸せはつかの間、ある村で起きた闘蛇の大量死の原因究明を命じられたのがきっかけに再び運命に翻弄されていきます・・・。

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あらすじ(内容紹介)

愛する者と結ばれ、母となったエリン。ある村で起きた闘蛇の大量死の原因究明を命じられ、行き当たったのは、かつて母を死に追いやった禁忌の真相だった。夫と息子との未来のため、多くの命を救うため、エリンは歴史に秘められた真実を求めて、過去の大災厄を生き延びた人々が今も住むという遙かな谷を目指すが…。
(Amazonより引用)

闘蛇と王獣。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王の命に従って王獣を増やし、一大部隊を築き上げる。過去の封印をひとつひとつ壊し、やがて闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、伝説の大災厄は再びもたらされるのか。傑作大河物語巨編、大いなる結末へ。
(Amazonより引用)

前巻から11年後の物語となります。
前巻の【闘蛇編】【王獣編】を未読の方は是非、こちらを先にご覧ください(^^)

獣の奏者 闘蛇編・王獣編【読書感想・あらすじ】上橋菜穂子著書

続編の位置づけになる本編【探求編】【完結編】は「ある村で起きた闘蛇の大量死」の原因究明の件から始まります。
闘蛇の大量死と言えばどこかで聞いた気が・・・。
そう、【闘蛇編】の冒頭、即ち『獣の奏者』の物語の始まりですね。エリンの母、ソヨンが闘蛇の中でも戦闘力が高く重宝される「牙」を一夜にして全て死なせてしまったことから、死刑されてしまいました。
【闘蛇編】【王獣編】の中ではこの「闘蛇の大量死」の原因については深く触れることはなかったのですが、続編にあたる【闘蛇編】【王獣編】では追求していこうという訳ですね。
闘蛇に関しては今までのストーリーの中でも王獣の引き立て役みたいな感じで陰に隠れてしまった感がありますからね(^^;)
「闘蛇の大量死」の原因を追求することで闘蛇の生態が色々、解明されていきます。

王獣については前巻までのエリンと王獣リランの交流により様々なことが解明されましたが今回、新たな謎が発覚。
リランの子どもたちが成獣になっても「子づくり」をしないのです。リランの時と同じく野生の成獣を連れてきてもダメ・・・。
王獣の生態についてもまだまだ追求が続きそうです。

また物語の大きな流れとして前巻【闘蛇編】【王獣編】までは舞台となる「リョザ神王国」内でのいざこざの話でした。
「真王領」と「大公領」ですね。
【王獣編】のクライマックスで「真王」のセイミヤと「大公」のシュナンが結ばれるので国内でのいざこざの話は多少は引きづっているものの一応は完結してます。
そうなると次は他国へと目が移ります。
前巻【闘蛇編】【王獣編】でも他国については名前程度は出てくるものの、基本的のは闘蛇部隊の圧倒的な戦力により駆逐される・・・。
「リョザ神王国は安泰である」というのが前提でした。

しかし11年後の【探求編】【完結編】では、まず凶作が災いして国の財政があまりよくない印象。
加えてまだ少し「真王派」「大公派」でギクシャクしている感じ。
そして何より、今までは自国の専売特許と確信していた「闘蛇部隊」のノウハウが他国に流出した可能性がある・・・。

このままだと他国に蹂躙されてしまう危険性のあるリョザ神王国。
期待されるのは闘蛇の唯一の天敵である王獣部隊。

しかし王獣部隊を結成するとその昔に起きた災いの二の舞になることも想定でき、そもそも前述した通り王獣はエリン以外に繁殖に成功していません。

国の命運を握っているのは当然、エリン__。

エリンが苦悩しながらも再び国の命運に大きく関わり、前巻【闘蛇編】【王獣編】では解明されなかった「王獣」「闘蛇」の謎、そしてはるか昔に起きた災いの真相に迫ります!

※ここから先はネタバレを含みます。

本書の見どころと感想

大量死する闘蛇と子を産まない王獣

「闘蛇」と「王獣」は本書『獣の奏者』にとって欠かせない生物です。
続編となる【探求編】【完結編】ではその生態にさらに奥深く迫ります。
エリンはある村で闘蛇の大量死の原因を探り、「特滋水」を与えることによる病変だと気づきます。
王獣と同様、特滋水は闘蛇の繁殖を抑える役目があるようです。
これも王祖の一族と霧の民が悲惨な戦が再び起こらないようにと弄した策なのでしょか・・・。
闘蛇の大量死の調査に同行したヨハルの願いで闘蛇衆発祥の地、ウハンに行ったことにより、エリンはさらに闘蛇の生態について深く知ることになります。

「王獣が子どもを産まない」というのも【探求編】【完結編】では序盤から大きな謎として取り上げれらてます。
王獣を繁殖できないと王獣部隊が結成できないわけですからね(^^;)
こちらの原因は「音無しの笛」や「特滋水」のような意図して妨げるものではなく「野生動物の掟」みたいなものでした。
「いつまでも親と一緒に住んでいてはいつまでも成獣になれず、自分の縄張りを築いてはじめて子どもをつくれる」みたいな・・・。
王獣保護場という狭いエリアではエリン以外に子どもを産まなかったのはこのことが原因だったようです。

何はともあれ「闘蛇」と「王獣」の生態を深く知ることは、結果的により屈強な戦闘部隊を築き上げることに繋がっていきます・・・。

他国の関係

前巻【闘蛇編】【王獣編】までは他国のことについてはあまり触れられることはありませんでした。
本編では主に2つの国が物語に絡んできます。

■トゥラ王国

物語の序盤よりリョザ神王国と友好的に交流を重ねていきます。
トゥラ王国のエピソードとしては大公シュナンの妹、オリとトゥラ王国の王子タウロカ、そして闘蛇の大量死の調査で同行したヨハンの息子、ロランとの三角関係に尽きると思います。
ヨハンは闘蛇衆の最高位である黒鎧で大公の側近にあたる人物。オリとロランは幼馴染にあたり、オリはロランにずっと恋心を抱いてました。
タウロカ王子は最初の交流の際からオリを気に入っている様子。ロランはオリの気持ちに気づいている節もありますが・・・。
楽師という立場上か、あまり深入りはしない様子。
最終的にはリョザ神王国が凶作による財政難のピンチにオリがタウロカに嫁ぐことにより、きりぬけるという政略結婚的な結末を迎えてします。
悲恋ではありますが恋愛エピソードに乏しい本書にとってはほど良いスパイスになっているのでは思います。

■ラーザ

前巻からちょいちょい攻め込んできては闘蛇部隊にやられている国。
しかし本編では状況が一変してます。
エリンがヨハルとともに闘蛇の大量死の調査の件でウハンに滞在していた際に敵襲に遭います。
その時に狙われたのはエリンではなくヨハルでした。
ラーザが闘蛇衆の生け捕りに多額の賞金を懸けていたことが原因でした。
そして既に8年前にすでに一人生け捕りにされていました・・・。
闘蛇を操る術は一長一短で身に付くものではありませんが8年の歳月もあれば・・・。
ラーザは既に闘蛇部隊結成の準備を着々と進めているかも知れません。そんな焦りがエリンに王獣部隊の結成を急かすことになります。

歴史の真相

ヨハルの登場により「血と穢れ」の全容が明らかになっていきます。
「血と穢れ」とは「真王こそ国を分裂させ、発展を滞らせる元凶とみなし、真王を暗殺し大公を王座につけようとしている集団」です。
前巻では表立って活動することはなかったのですが、実は王獣使いであるエリンの命を狙っているとか・・・。
ヨハルは闘蛇衆の最高位の黒鎧にして元「血と穢れ」を束ねていたこともあるという人物。
「血と穢れ」という組織も彼の曽祖父が結成したという血筋的にも大公側の重鎮です。ヨハルはエリンに自分の近くにいれば「血と穢れ」に狙わずに済むと思い、自ら闘蛇大量死の調査の同行を買って出ました。
そしてエリンを死なせたくなかった理由は「失われた過去」を知るためです。

『残った人々の記』

ヨハルの一族に代々伝わる日記です。
かなり古ぼけているうえに特殊な文字で書かれているため今では誰も読めない代物です。
そこでヨハルのは霧の民であるエリンなら読めるでは!?と思った訳ですね。

実際、エリンはこの特殊な文字について母のソヨンから教わっていました。
そして闘蛇の大量死の調査で訪れた最初の村で親戚がいてずっと預かっていたという形見を受け取ってました。
形見というのはソヨンの生前の日記の一部でした。

そこには「残った人々の谷間」に行きたい・・・。

そんなことが書かれてました。

本編で初めて登場した「残った人々」。

流浪の民となった「霧の民」や代々、真王をつとめる王祖の血縁意外にも神々の山脈に残った人達がいるようです。

「残った人々」が王獣と闘蛇の秘密を鍵を握ってそうです・・・。

過去の歴史では王獣部隊と闘蛇部隊が相まみえた時、人も獣も死に絶えるほど悲惨な状況になったと言います。
しかし普通に考えると闘蛇は王獣に歯が立たないので王獣部隊の圧勝で闘蛇部隊が惨めな形になるはず・・・。

真相はクライマックスに明かされます。

エリン一家の家族愛

本編ではエリンは「堅き盾」だったイアルと結婚して、ジェシという子どもがいます。イアルは「堅き盾」を引退し指物師として働いてます。
「堅き盾」って簡単に抜けれたんですね・・・。
前巻【闘蛇編】【王獣編】においてはほとんど恋愛話がなかったので意外といえば意外(^^;)

前巻まではエリンと王獣の交流がメインの物語でしたが本編ではエリン一家の家族愛が描かれています。
ほのぼのとしたシーンより、危険にさらされたり苦悩しているシーンの方が多いのですが・・・。

まとめ

著者の上橋さんは【闘蛇編】【王獣編】で完結させるつもりで書いたはずで【探求編】【完結編】は当初の構想外だったと思うのですが、とってつけた感は全くありませんでした。

私見では【闘蛇編】【王獣編】で完結した方がポジティブに終わることができて良かった気もします。本編【探求編】【完結編】では行き着くとこまで行ってしまった感じ。
前巻に増してズシリと重たいストーリーになってます。それが物語の深みにもなっているのですが(^^;)

以上、「獣の奏者 探求編・完結編【読書感想・あらすじ】上橋菜穂子著書」でした。

 

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