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2017年本屋大賞2位!みかづき【読書感想・あらすじ】森絵都著書

2017年本屋大賞、堂々の2位。

教育をテーマに塾の経営に携わる三世代に亘る家族の人間模様を描いた感動巨編でどの年代にもおすすめできる良書、森絵都著書の『みかづき』の読書感想です(^^)

目次

あらすじ(内容紹介)

昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!

(Amazonより引用)

小学校の用務員をしてるのですが、何故か「子供の学習力を引き出すこと」に非凡な才能を持つ大島吾郎。教員免許を取り、教育者を志していましたが、公教育に嫌気がさし、学習塾の運営を計画している赤坂千明。

千明が用務室での吾郎の授業がとても評判が高いことを聞きつけ、娘の蕗子をスパイとして送り込んだことがきっかけで吾郎と千明は出会い、千明の半ば強引な勧誘で共に塾を運営することになります。

ここから、塾業界を舞台とした3世代の物語が始まります。

出だしこそ順調でしたが熾烈な同業者争いが勃発したり国の教育方針の変更により翻弄され、さらに少子化に伴い苦しい状況に立たされる塾業界、そしてそれに関わる家族三世代の人間ドラマ__。

登場人物の個性が際立っていて、昭和から平成にかけて波乱万丈の塾業界を、時には袂を分かつほど衝突し、時には協力し苦難を乗り越える家族三世代を中心とした人間模様を描いた、まさに感動巨編です。

幅広い年代をカバーしているので読者のそれぞれの年代で自身の子供時代の教育について回顧しながら読み進めるのも感情移入ができて面白いかと思います(^^)

※ここから先はネタバレです。

ネタバレ読書感想

多彩な登場人物を把握しよう

塾を舞台に繰り広げられる小説なので教育に携わる(やがて携わる)ことになる人々が多数登場します。

物語の中心となる大島(赤坂)家の面々を中心に登場人物を整理していきます。

 ■大島(赤坂)千明

ジャックナイフのように切れ味が鋭い性格で自分がこうと決めたらとことん突き進むタイプ。

塾経営では常に主導権を握り相当のやり手ではあるが、方針で揉めた吾郎を会長の座から失脚させるなど強引さが目立つ。

■大島吾郎

子供の学習能力を引き出すという面では天才だが、のん気でとぼけたところがあり、野心を抱かないタイプの人間なので基本は愛されキャラである。マザコン気質で人妻の誘惑に抗えない一面も(^^;)

しかし教育に賭ける志は強く、経営を優先させる千明と事あるごとに喧嘩になる。

■大島(赤坂)蕗子

長女。吾郎とは血縁関係はない。優しく聡明な性格のため強引に突き進んでいく千明より大らかな吾郎を慕っている。母への反抗からか国公立の教師を目指す。千明が吾郎を失脚させた際は激怒し暫く千明とは絶縁状態になるが旦那になる上田の死をきっかけに再び、千明と同居する。

■大島 蘭

次女。千明と吾郎の間での初の子供。プライドが高く負けず嫌い。故に成績は常にトップ。団体行動は苦手で人を見下すような態度をとるので子供ころからトラブルが絶えない。性格的には千明に通じるところがある。千明の経営する塾に事務として入り、頭角をあらわしていく。

■大島菜々美

三女。人懐っこい性格。ちょうど千明と吾郎が仕事で揉めていたころ思春期を迎えており、グレかけていた。蕗子、蘭ほど勉強に関心がなく高校すら行く気がなかったほど。高校卒業後は海外で生活する。

■上田一郎

蕗子と純の長男。千明や吾郎の孫にあたる。口下手でのんびり屋。教育業界に関心がなく、大学を卒業してもフリーターをしていたが・・・。

■勝見正明

勝見塾という塾を経営していたが、大手塾に対抗するため千明に誘われ、八千代進塾の共同経営者に。巧な話術でまるで「舞台」かのような授業を行い、子供たちの人気を得る。途中で大手チェーンに経営幹部として移籍する。

■上田純

初期の頃から八千代塾で働く講師。過去に学生運動にも参加していた熱血漢だが、本当は気遣いのできるおおらかな性格。吾郎が塾を去る時に共に去り、秋田に帰り実家の農業を手伝う。後に蕗子と結婚。

■国分寺努

36歳にして千葉進塾の事務局長になり千明体制を支えた。口は悪いが有能で千明からの信頼も厚く、後に千葉進塾の塾長にまでなる。

■佐原修平

蘭の夫。物語の後半から登場。実家は花屋だが蘭とともに高齢者向けの宅配サービスを始める。料理の腕はプロ顔負けで瞬く間に人気になり、一郎に宅配のサポートを頼む。

ざっと挙げただけでこれだけの登場人物です(^^;)

三世代に亘る長編小説ですのでこれだけの登場人物が時代により立場を変え、繰り広げる人間ドラマは見応え充分です。

塾業界を舞台とした3世代に亘るドラマ

3世代に亘る長編ドラマをダイジェストで紹介します。

昭和37年頃に千明の強引な誘いより、吾郎は千明と共に「八千代塾」を開塾します。この頃はあくまでも自宅兼教室でした。高度成長期で子供の教育に関心が出てきた時代なので思いの他、順調なスタートでした。しかし、需要とは裏腹に塾の立場は社会的にはまだまだ認知されていない時代でした。

塾の需要が増えるにつれ、大手塾の参入が著しくなります。千明は大手塾に対抗するために勝見塾を経営していた勝見正明と共同経営に乗り出します。吾郎は何の相談もなく共同経営の話を進めた千明に不満を抱きつつも身重の千明の身体も考え、最終的には同意します。

古民家を改装して「八千代進塾」として再スタートを切ります。塾の需要の増加は止まらず千葉県内に4つ教場を持つまでに成長し、名称も「千葉進塾」に変更します。

昭和50年、規模が拡大することで共同経営の方針に無理が生じてきたことを理由に勝見が塾を去ります。その頃から時代のニーズに合わせ、千明が当初の方針の子供たちの授業の補佐を行う学習塾から受験のための進学塾に方針を変えていきます。吾郎はそのことに猛烈に反対します。

昭和55年、千明は独自で自社ビル建設を計画して進学塾に切り替わる準備を進めます。その頃には千明と吾郎の間には埋められない溝ができており、とうとう吾郎は塾長の座を退きます。

その後、千明が塾長を引き継ぎ、攻めの方策をどんどん打ち出しては成功させて首都圏に22の教場を持つ、中堅どころまで成長します。

しかし、同業者争いもエスカレートする一方。まるで戦争かの如く同業者の嫌がらせを受けます。また塾講師たちのストライキの勃発、文科相からのたびたびの圧力がかかり、強引な方策で急成長した代償とばかりに災難が連続してふりかかる千明。この頃、塾に事務員として入った次女の蘭や国分寺のサポートにより何とか災難を切り抜けます。

私学の買い取りの話が舞い込み、すっかりその気になる千明。塾ではなしえなかった教育の実践を夢見て躍起になります。秋田で公立の教師をやっている長女、蕗子にサポートを頼みますが断れてしまいます。また秋田から帰省後、蘭と国分寺に説得され、私学の運営は断念します。しかしこれを機に国分寺と共に物置になっていた用務室を整理し、勉強についていけない子供たちのために無償で補習を行う教室を立ち上げます。まさに原点回帰、平成5年のことでした。

平成11年、バブル崩壊を受け、最大28校まで拡大した教場を5年かかりで18校に縮小。都内から撤退し千葉に特化した受験指導に方針を変えていきます。その頃、蘭が千葉進塾とは方針が合わないと独立し「オーキッドクラブ」という個別指導塾を立ち上げます。千明は最初は賛成でしたが、「講師が外見重視」「清潔なブースにパッケージが意味を持つ」という教育とは無関係のことを重要視する蘭に不安を覚えていきます。その不安は的中。とある事件が起こり「オーキッドクラブ」は大打撃を受けます。年も取り、体調が悪くなってきた千明は蘭の事件の直後、倒れてしまい検査の結果、腫瘍が見つかります。しかし早期発見が幸いして良好な状態で退院します。退院後は国分寺に塾を任せようとしますが、千明が不在の間、ずっと用務員室での補習授業をなんと吾郎が代行してくれていました。「自分はまだ若いので吾郎さんに塾長になってもらえれば」と国分寺は提言します。

平成18年、再び大島吾郎の看板を掲げ、一部の親から熱い支持を得ていた千葉進塾。しかし表面的な人気はあっても経営状況は悪化する一方です。

その頃、大学を卒業したての蕗子の息子、一郎は就職氷河期の煽りを受けて未だ職につけずにいました。生前の千明とはソリが合わず、教育業界には良い印象を持っていませんでした。

ある日、教育業界から退き、結婚した蘭の夫である佐原の依頼を受け高齢者向けの宅配弁当の配達の仕事を手伝います。その配達先で起きた少女との出会いをきっかけに一郎の人生が大きく変わっていきます・・・。

まとめ

世代により考え方は違ってくると思うので多彩な登場人物の誰に共感を感じるかは様々だと思います。

強引さが目立つ千明が本書では悪者っぽい感じにもなってますが、実際に最初から最後まで千葉進塾を支えたの千明です。道中は当初の志を忘れたかのような行動もありましたが、塾を経営するということ理想の教育を続けることの両立に苦しんだエピソードもありました。

一方、吾郎はカリスマです。教育者としての人気も実力も千明は全く吾郎に敵いません。時代が変わっても当初の志をぶらさない強い意志も持ち合わせています。しかし本来の性格は無欲でのんびり屋さんなので千明に巻き込まれなければ恐らくここまで大きく成功しなかったでしょう。それに人妻の誘惑に弱いという教育者としては致命的な欠点を持ってます。昔ならともかく今は不倫にはとても厳しい世の中ですからね(^^;)

結局、この二人がいてこその千葉進塾だったと感じます。ですので大喧嘩をして別れましたが、お互いに年を取った頃に再会する件が結構、お気に入りです(^^)

長編の中、時に微笑ましく、時には感動し、時には怒りを覚え、時には切なくなる・・・。感情を揺さぶってくれる人間ドラマはどの年代の方にもおすすめできます。

大変読み応えのある内容でした(^^)

 

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