モダンは本来「現代的」というような意味ですが、「モダンジャズ」とは何なのでしょうか・・・。
「現代的なジャズ」という意味なのでしょうか?
今回はモダンジャズをおすすめ名盤とともにご紹介したいと思います。
モダンジャズとは
スイングジャズの衰退
モダンジャズの前にまずはスイングジャズをご紹介したいと思います。
スイングジャズは1920~30年代にアメリカの国民的音楽と言われるほど流行し、主に大編成のビッグバンドでの演奏が主体でした。
当時の高級ナイトクラブやダンスホールで演奏されることが多く、ダンスミュージックとして大衆人気を獲得したのです。
リズムはシンプルな4ビートで心地良いスイング感が特徴でしょうか。
1930年半ば頃はベニー・グッドマンやグレン・ミラーをはじめとする白人ミュージシャンが自らのバンドを従え、大いに活躍しました。
スイングジャズについてはこちらの記事もご参照ください。
1940年、第二次世界大戦が始まる頃、不況により「大所帯でのバンド」を維持するのが困難になってきます。
こういった時代背景もあり、ビッグバンドが主体のスイングジャズは衰退していき「小編成のバンド」が主流になってきます。
ビ・バップの誕生
スイングジャズの衰退に併せ、バンドに所属していた一部のジャズミュージシャンたちが「譜面」に合わせるだけの演奏に満足できなくなっていました。
「自身の演奏力をフルに発揮し独創的な演奏をしたい」と思う若手ミュージシャンが出てきたのです。
そんな血気盛んな若手ジャズミュージシャン達がレギュラーの演奏後に自らの演奏のテクニックを披露する場、ミュージシャン同士が互いに腕を競う合う場としてジャムセッションをするようになります。
アルトサックスのチャーリー・パーカー、トランペットのディジー・ガレスピー、ピアノのセロニアス・モンク、ドラマーのケニー・クラークらがその中心でした。
彼らはニューヨークにあるライブハウス「ミントンズ」で夜な夜なジャムセッションを繰り広げ、腕を競い合ったそうです。
その演奏スタイルはリズムをより細かく、コード進行も敢えて複雑にするなど、ミュージシャンのセンスとテクニックをフルに発揮する独創的なもので、これまでのダンスミュージックとしてのジャズとは一線を画したものでした。
しかし良く言えば「独創的」「芸術的」な演奏ですが、悪く言うと「難解」に聴こえる演奏。
ジャズが苦手な方の多くの理由は「難解」です。
ビ・バップはもともと「ミュージシャン達のための演奏」として発展したわけですから最もな理由の気がします(^^;)
当時からビ・バップの評価は賛否両論。
「演奏者の一人よがりでうるさいだけの音楽」と評する人もいれば「芸術的で素晴らしい」と評価する人もいました。
何はともあれビ・バップの誕生により、ジャズは従来のダンスミュージックから芸術的思考の強い音楽となります。
ビ・バップからのジャズを暫くはモダンジャズと言います。
モダンジャズ(現代的なジャズ)とは「ジャズがまだダンスミュージックだった頃(あるいはそれ以前)に比べて」という意味になります。
ビ・バップからの発展
1950年代になるとビ・バップが様々な形で発展していきます。
ジャズの帝王と呼ばれるトランぺッター、マイルス・デイビスが1950年に「クールの誕生」というアルバムをリリースします。
ビ・バップのように演奏者のテクニックとセンスに頼る演奏だけでなくバンド全体でのサウンドを追求した繊細で抑制がきいた音楽を試みました。
時を同じくしてアメリカの西海岸の方で白人ミュージシャンを中心にウエストコーストジャズが誕生します。
これらは編曲を重視し、抑制の利いたアドリブが特徴の演奏スタイルでクールジャズとも呼ばれました。
クールジャズについてはこちらの記事もご参照ください。
クールジャズを聴いてみよう!【クールジャズのおすすめ名盤7選】
ウエストコーストジャズが西海岸で白人ミュージシャンを中心にビ・バップから発展したジャズとするなら、ジャズの本場、ニューヨークでは負けじと1950年代の半ば頃よりハードバップが誕生します。
ハードバップはビ・バップをさらに派手にエキサイティングにそして黒人特有のブルージーなノリに進化させたジャズです。
またビ・バップがジャズを大衆音楽から一気にアートに引き寄せたとしたらハード・バップは少し、わかりやすく大衆向けに戻したと言えます。
ハード・バップの時代の代表的ミュージシャンはマイルスデイビス、ソニー・ロリンズ、クリフォード・ブラウン、アート・ブレイキーなどです。
マイルス・デイビスはクールジャズに引き続きここでも名前が上がります(^^;)
彼はビ・バップ以降のジャズシーンにおいて常に先頭を走っていたミュージシャンです。帝王と呼ばれる所以ですね。
1960年前後にはモードジャズというスタイルが現れます。
ビ・バップ以降のジャズはコード進行に基づきアドリブを展開してきました。コード進行を敢えて複雑にしてミュージシャンの腕を競っていたのですが、逆に今度はコードの縛りがミュージシャンの演奏を束縛しアドリブがマンネリ化してしまうことになります。
そこでコードという概念を払拭し、モード(音階)を用いてアドリブを演奏するモードジャズが誕生しました。
コード進行のもと演奏されるビ・バップやハードバップとモードジャズの違いというのは中々、説明が難しいのですが・・・。
コード進行をもとにアドリブする際は曲中に目まぐるしくコードが変わるので「その時のコードに見合った音」をチョイスしアドリブを繰り広げます。
当然、曲のコード進行を全て把握している必要がありますし、コードにあった音をちゃんと理解していなければいけません。
モードジャズは一つの曲を少ない音階でアドリブするので表現の自由度が高くなります。
素人考えではちゃんとコードを意識して演奏しなければ行けないビ・バップやハード・バップの方が難しいイメージがしますが、
モードジャズはシンプルになった分、演奏者のセンスがより問われることになります。
モードジャズを最初に世に送り出したのはマイルス・デイビス。
やはりこの人です(^^;)
モダンジャズとはビ・バップ以降からモードジャズまでのことを指します。
以降はモードジャズをさらに自由にしたフリージャズ、ジャズフュージョンなどが台頭し多様化が進んでいきます。
モダンジャズおすすめ名盤①
Now’s The Time Box set(チャーリー・パーカー)
ジャズ史上、もっとも偉大なミュージシャンとして名高いチャーリー・パーカー。
ディジー・ガレスピー達とともにビ・バップを創った人でもあります。
当時のビ・バップは革新的な音楽であったのですが、その中でもチャーリー・パーカーの演奏は抜群に素晴らしいものでした。
チャーリー・パーカー以降のジャズアルトサックス奏者は少なからず彼の影響を受けているといっても過言ではありません。
重度の麻薬中毒者だったので1955年に亡くなっています。
ちょうどハードバップが流行りだす頃ですからビ・バップの時代はチャーリー・パーカーとともに終わったとも言えます。
おすすめは名盤というかお得盤ですが(^^;)
値段も手ごろでチャーリー・パーカーを充分堪能できると思います。
モダンジャズおすすめ名盤②
Groovin’ High(ディジー・ガレスピー)
チャーリー・パーカーと並ぶビ・バップの最重要人物。
圧倒的テクニックを誇るジャズトランぺッターです。ハイノートを早いパッセージで演奏する様は圧巻の一言。
センスとテクニックはピカイチ。まさにビ・バップにピッタリです。
若き日のマイルス・デイビスはディジー・ガレスピーほどのテクニックを持ち合わせておらず、そのことが自己の音楽を見つめ直すきっかけになり、後のジャズの発展につながったとか・・・。
それほどディジー・ガレスピーのテクニックは群を抜いたものだったのです。
エンターテイナーとしても有能で演奏時に膨らむ両頬、上に曲がったトランペット、ひょうきんな性格・・・。
何かと魅せてくれるジャズミュージシャンです。
今回はディジー・ガレスピーの初期の代表作をおすすめさせていただきます。
モダンジャズおすすめ名盤③
ソロ・モンク+9(セロニアス・モンク)
ユニークな演奏、不可解な行動、無口な性格からジャズ史上きっての「奇人」と言われるセロニアス・モンク。
しかし彼のジャズ理論は素晴らしいものがあり、ジョン・コルトレーンが師匠と仰ぎ、バド・パウエルにも大きな影響を与えました。
作曲家としても『ラウンドミッドナイト』をはじめ、美しい曲を数多く残しました。
一般的な知名度はマイルス・デイビスやチャーリー・パーカーには劣りますが、ジャズ史上においてはそれらのミュージシャンに並び評される偉大な人物です。
おすすめはソロピアノのアルバムを。
彼の演奏はユニークで緊張感のあるものを多いのですが、このアルバムは比較的リラックスし、且つ、セロニアス・モンクのピアノを充分堪能できると思います。
モダンジャズおすすめ名盤④
ザ・シーン・チェンジズ+1(バド・パウエル)
ピアノ・ベース・ドラムからなる「ピアノトリオ」の先駆者と言われるバド・パウエル。
華やかで力強い演奏はピアノを一気にジャズの花形楽器に押し上げました。
ただあのチャーリー・パーカーに心配されるほどの麻薬中毒者だったようです(^^;)
おすすめ名盤はバド・パウエルの全盛期が過ぎた頃のものですが・・・。
『クレオパトラの夢』という曲がとにかく有名で、人気のあるアルバムなのでバド・パウエルを最初に聴くなら、やはりこれかなと。
モダンジャズおすすめ名盤⑤
チェット・ベイカー・シングス(チェット・ベイカー)
ここでウエストコーストジャズの名盤を一つ入れさせていただきます。
メロディアスなトランペットの演奏、中性的な甘いボーカル、そして若い頃はジェームス・ディーンを彷彿とさせる甘いマスクで人気だったチェット・ベイカー。
一時期はあのマイルス・デイビスを凌ぐほどの人気を誇りました。
しかし彼も重度の麻薬中毒者で決して良いことばかりのキャリアではありませんでした・・・。
チェット・ベイカーの半生は最近、映画にもなりました。
「ブルーに生まれついて」映画感想・あらすじ【チェット・ベイカーの自伝映画】
おすすめ名盤は彼の代表的なアルバムをご紹介させていただきますがウエストコーストジャズをはじめクールジャズのおすすめは是非こちらの記事もご参照ください。
クールジャズを聴いてみよう!【クールジャズのおすすめ名盤7選】
モダンジャズおすすめ名盤⑥
スタディ・イン・ブラウン(クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ )
ジャズ史上、最高の天才といわれるトランぺッターのクリフォード・ブラウンが活躍していていたのがちょうどハード・バップ全盛の頃。
そして彼は25歳の若さで交通事故で亡くなります・・・。
なので彼の残したアルバムの大半がハード・バップが盛んだった時期となります。
チャーリー・パーカーがビ・バップの象徴ならクリフォード・ブラウンはハード・バップの象徴的ミュージシャンと言えるかもしれません。
おすすめ名盤はドラマーのマックス・ローチとの双頭バンドのアルバム。
クリフォード・ブラウンのセンスあふれる演奏とハード・バップの神髄を味わえる作品です。
モダンジャズおすすめ名盤⑦
SAXOPHONE COLOSSUS (ソニー・ロリンズ)
ソニー・ロリンズは今もなお、ご存命の息の長いジャズミュージシャンですが彼の名盤はハード・バップの時代に集約されていると言っても過言ではありません(^^;)
もちろん、他の時期にも良いアルバムはありますが・・・。
そう言われるほどこの時期にジャズ史上に残る名盤を出しています。
今回は最も有名な1枚をご紹介させていただきますが、ソニー・ロリンズについて書いた記事もございますのでもしよろしければこちらもご参照ください。
ソニー・ロリンズおすすめ名盤5選【ジャズテナーサックスの最高峰】
モダンジャズおすすめ名盤⑧
バードランドの夜 Vol.1+2 (アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ )
このライブからハード・バップが始まったと言われています。
また長きに亘りジャズシーンで活躍することとなるジャズメッセンジャーズのスタート地点と言われる作品です。
先に紹介した天才トランぺッター、クリフォード・ブラウンをはじめ、この時期を代表するミュージシャンたちが繰り広げる白熱のライブはスタジオ録音では味わえない熱気を感じます。
モダンジャズおすすめ名盤⑨
Kind of Blue (マイルス・デイビス )
帝王マイルス・デイビスが世にモードジャズを送り出した1枚であり、全世界で1000万枚以上売れたアルバムでもあります。
革新的な試みもさることながらバンドメンバーもビル・エバンス、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、ポール・チェンバース 等、超豪華。
常に最先端の音楽を当時の最高のミュージシャンを集めて発表し続けたマイルス・デイビスのアルバムの中でも最高傑作と言われる作品です。
『Kind of Blue』はAmazonプライム会員なら無料で聴けますので会員の方は是非聞いてみてください。
モダンジャズおすすめ名盤⑩
処女航海 ( ハービー・ハンコック )
1965年、ハービー・ハンコックのリーダーアルバム。ちょうどその頃、ハービー・ハンコックはマイルス・デイビスのバンドにも参加していました。
ですのでちょうどマイルス・デイビスの影響も受けていた時期でしょうか。
難解なイメージを持たれがちのモードジャズをポップな感じに仕上げてくるのは流石のセンスです。
ハービー・ハンコックはこの後にジャズファンク『ヘッド・ハンターズ』での活動をはじめ、ジャズの分野に留まらず、様々な分野を開拓していきますが、モダンジャズとしてのハービー・ハンコックの代表作といえばやはりこの1枚かと思います。
まとめ
1940年代、チャーリー・パーカーから始まったビ・バップから1960年代、マイルス・デイビスが提唱したモードジャズまでをモダンジャズと言います。
この頃は既にロックがアメリカでは主流となっており、スイングジャズの時代のように決して大衆人気があったとは言えませんが、ジャズの芸術性が認められ、クラッシクのように音楽の「一つの分野」として確立された時期とも言えます。ジャズの名盤と言われる作品は概ねこの時期のアルバムが多いですね。
以上、「モダンジャズとは【モダンジャズのおすすめ名盤10選】」でした。
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